設定は受け入れ難いのに読む手が止まらなくなる恋愛漫画3選

とんでもない設定なのに読む手が止まらなくなる恋愛漫画3選

幼なじみ、生徒会長、屋上での告白。王道には王道の良さがあります。

でも、あらすじを読んだ瞬間に「え、待って」と声が出るような作品にしか出せない中毒性も、たしかに存在します。

今回紹介する3作は、いずれも設定そのものが物語のエンジンになっているタイプ。奇をてらっただけの一発ネタではなく、その異常な条件下でしか描けない「恋の正体」に踏み込んでいく作品を選びました。読み終わったあと、しばらく他の恋愛漫画が薄味に感じるかもしれません。

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3度の食事より少女漫画が大好きな編集者Xです。恋愛漫画はいわば人生のバイブル、成功も失敗も挫折もときめきもすべてが詰まっています。
暇があれば恋愛漫画を探しに電子書籍アプリを渡り歩いている少女漫画大好きっ子。

CONTENTS

  1. 青野くんに触りたいから死にたい/椎名うみ
  2. あげくの果てのカノン/米代恭
  3. わるいあね/三輪まこと
  4. まとめ

01

青野くんに触りたいから死にたい

椎名うみ/講談社・月刊アフタヌーン

彼氏が死んだ。でも幽霊になって戻ってきた。触れれば、こちらが死ぬ。

青野くんに触りたいから死にたい 1巻 書影
『青野くんに触りたいから死にたい』第1巻
巻数 全14巻(完結)
連載期間 2017年〜2025年
ジャンル ホラー × ラブストーリー
メディア化 2022年 WOWOWで実写ドラマ化

あらすじ|触れられない恋人と、触れたい少女

天然な女子高生・刈谷優里は、初めてできた彼氏・青野龍平と穏やかな交際をスタートさせます。ところが交際開始からまもなく、青野くんは事故で死亡。悲しみに沈む優里の前に、彼は幽霊として現れます。

姿は見える。声も届く。でも、触れられない。触れようとすれば、今度は優里の身体が危うくなる——。

とんでもないポイント|好きだから死ぬしかない

やっと恋人になれたのにいきなりいなくなってしまう、冒頭からそれは辛すぎるよ、と切なくなる展開で始まるが、「じゃあ私が死ねばいいのでは?」という発想に、あっさり到達してしまう逆にピュアな主人公。好きな気持ちは死をも超えてくるという破壊力に驚嘆させられます。

『青野くんに触りたいから死にたい』を読む >

02

あげくの果てのカノン

米代恭/小学館・月刊!スピリッツ

地球外生命体に侵略された東京で、世界の英雄と不倫する。

あげくの果てのカノン 1巻 書影
『あげくの果てのカノン』第1巻
巻数 全5巻・全30話(完結)
連載期間 2015年〜2018年
ジャンル SF × 不倫
話題 押見修造・志村貴子・村田沙耶香ら作家陣が絶賛

あらすじ|世界の危機より、片想いのほうが重い

高月かのん、23歳。高校時代から片想いしていた境先輩と、バイト先の喫茶店で再会します。

ただし、状況が普通ではありません。東京は「ゼリー」と呼ばれる地球外生命体の侵略を受け、一部は壊滅状態。そして境先輩は、その脅威と戦う組織の戦闘員——つまり国民的ヒーローになっていました。しかも、既婚。

とんでもないポイント|世界がめちゃくちゃなことより自分の恋愛

まずSF×不倫というテーマが斬新。で、SF要素としてはもはや世界が侵食されて滅びようとしているなんていうめちゃくちゃな状態。にもかかわらずかのんにとって世界の存亡は背景でしかなく、関心は一貫して境先輩ただ一人に向いている。かのんの世界=境先輩。うん、それが恋愛だよねって妙に納得できてしまうから不思議。

主人公は自己肯定感が低く、読んでいてイライラする瞬間もあります。それでも目が離せないのは、彼女の言動が「誰もが少しは心当たりのある感情」の純度をひたすら上げただけのものだから、なのかもしれません。

『あげくの果てのカノン』を読む >

03

わるいあね

三輪まこと/小学館・ビッグコミックスペリオール

かつて実の弟を「誘拐」した姉が、7年後に再会する。

わるいあね 1巻 書影
『わるいあね』第1巻
巻数 全3巻・全36話(完結)
ジャンル 禁忌 × サスペンス・ラブ
キャッチ 「私はかつて、実の弟を誘拐した」

あらすじ|7年ぶりに現れた弟は「男」になっていた

大森日向子、25歳。植物館の職員として、身を隠すように暮らしています。高校3年生のとき、彼女は弟・夏樹を連れ去り、その末に事故を起こしました。両親は離婚し、家族は崩壊。以来、弟とは会っていません。

そんな彼女の前に、7年ぶりに夏樹が現れます。少年ではなく、「男」になって。

とんでもないポイント|禁忌に触れた家族の恋愛

義理の兄弟姉妹を扱った作品は山ほどありますが、血のつながった実の姉弟を正面から描く商業作品はきわめて少ない。コンプラが叫ばれる昨今でここまで禁忌に触れるのは逆に勇気がいるような気がするけれど、読み進めていくと、冒頭に感じた嫌悪感はいつの間にか消えていて、むしろ幸せになってほしいとすら思っている自分がいた。

ちゃんとそれぞれの登場人物が、禁忌ゆえの罪悪感をずっと持ち続けて苦しんで生きている、それが伝わってくるからこそ嫌悪感も批判も超えて応援したくなるのかもしれない。あくまでも作品として、読む価値あり。

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まとめ|

3作に共通しているのは、受け入れがたい設定を「ネタ」で終わらせていないこと。ありえない条件を課すことで、かえって恋愛感情の輪郭がくっきり浮かび上がる——そういう作りになっています。心に余裕があるときにぜひ読んでみてください。

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