前回は本命の恋愛漫画でまとめましたが、今回はジャンルに限らず読後感が最悪、なのに人に薦めたくなる作品という切り口で3作品を紹介します。
でも、たまにあります。読み終えて数日引きずったのに、なぜか誰かに読ませたくてたまらなくなる作品が。しかもその「誰か」は、たいてい自分が大事にしている人だったりする。
今回は、そういう漫画を3作。順番は意図的に「短くて浅い傷」から「長くて深い傷」へと並べています。心の余裕と相談しながら、どこまで進むか決めてください。
CONTENTS
01
タコピーの原罪
タイザン5 │ 集英社・少年ジャンプ+
ハッピーを届けにきた宇宙人が、
いちばん取り返しのつかないことをする。
| 巻数 | 全2巻(完結) |
|---|---|
| 連載 | 2021年12月〜2022年3月 |
| ジャンル | SF × 現代の地獄 |
| 実績 | このマンガがすごい!2023 オトコ編3位/累計180万部 |
| 映像化 | 2025年アニメ化/2026年11月27日 劇場版公開予定 |
あらすじ|ドラえもんの皮をかぶった、なにか
ハッピー星からやってきたタコピーは、地球で小学4年生のしずかと出会います。彼女に助けられたお礼に、タコピーは「ハッピー道具」で彼女を笑顔にしようとします。
けれど、しずかが笑わない理由は道具でどうにかなるものではありませんでした。壮絶ないじめ、機能していない家庭。作者のタイザン5が「陰湿なドラえもんをやりたい」と語ったとおり、便利な道具は状況を良くするどころか、事態を最悪の方向へ転がしていきます。
後味が最悪なポイント|善意しかない存在が、いちばん罪深い
タコピーに悪意はみじんもないんです。この作品の残酷さは、すべてが善意から始まっていること。何も知らない者が、良かれと思って手を出す。それがどれだけの被害を生むか。思い知らされます。
読んでいる側は、かわいい絵柄とゆるい語尾に油断させられたまま、逃げ場のない場面に連れていかれます。このビジュアルとストーリーのギャップがえぐいし斬新で今までにない、新しい作品だなと感じました。
それでも勧めたい理由|全2巻という良心
この記事の3作でいちばん傷が浅いのは、間違いなく本作です。理由は単純で、全2巻しかないから。夜に読み始めても朝には終わります。しかも投げっぱなしで終わらせず、最後にきちんと「その後」を描いてくれる作品でもあります。11月には劇場版の公開も控えているので、話題に乗り遅れたくない人は今のうちに。
RECOMMENDED FOR
- この手のジャンルを初めて読む人
- 短時間で強い読書体験がほしい人
- 映像化前に原作を押さえておきたい人
02
ぼくらの
鬼頭莫宏 │ 小学館・月刊IKKI
ロボットに乗れば地球は救われる。
ただし、操縦した者は必ず死ぬ。
あらすじ|15人の子どもが、順番に死んでいく
夏休みの自然学校で出会った15人の少年少女は、ココペリと名乗る男から「巨大ロボットを操って地球を守るゲーム」に誘われ、軽い気持ちで契約を交わします。
契約が済んだあとで、ルールが明かされます。ジアースと呼ばれるそのロボットは、1回戦うごとに操縦者の命を奪う。負ければ地球は滅びる。つまり彼らに残された道は、勝って地球を守って死ぬか、負けて地球ごと死ぬかの二択だけでした。
後味が最悪なポイント|死ぬ順番が決まっている物語
本作は数話ごとに操縦者ひとりへ焦点を当てる連作形式。つまり読者は毎回、これから死ぬ子どもの人生をじっくり読まされることになります。家庭の事情、抱えている秘密、報われなかった願い。理解して、情が移って、そして順番が来ます。
全11巻を通して、この構造をつらぬいていて、感動的に死なせてもらえる子もいれば、まったく救われないまま終わる子もいる。そこに公平さがないところが、いちばんきつい部分です。
それでも勧めたい理由|残された時間の使い方の話
この作品が問いかけているのは、「あと数日で確実に死ぬと分かったとき、人は何をするのか」です。誰かに謝りに行く子、何もできずに終わる子、最後に一つだけ守ろうとする子。時代が変わってもこの問いは普遍的に存在しているからこそ、いつ読んでも色褪せないのかもしれません。
RECOMMENDED FOR
- 群像劇が好きな人
- SFの皮をかぶった人間ドラマを読みたい人
- 感動と絶望を同時に浴びたい人
03
おやすみプンプン
浅野いにお │ 小学館・週刊ヤングサンデー〜週刊ビッグコミックスピリッツ
小学5年生の初恋が、
20年かけて人生を壊していく。
あらすじ|守れなかった約束が、呪いになる
小学5年生のプンプンは、転校生の田中愛子に一目惚れします。彼女から「もうすぐ地球は人の住めない星になる」と聞かされたプンプンは、宇宙を研究する人になろうと決意する。少なくとも、愛子ちゃんだけは救いたいと思ったから。
やがて二人は「どこか遠くへ逃げよう」と約束します。しかしその約束は果たされないまま、二人は疎遠になり小学校を卒業する。この果たされなかった約束が、その後のプンプンの人生に呪いのように残り続けます。
後味が最悪なポイント|他人事にできない
物語はプンプンの小学生時代から大人になるまでを追いかけます。恐ろしいのは、彼が特別に不幸な人間としては描かれないところです。ちょっとした自意識、ちょっとした嘘、ちょっとした先延ばし。誰にでも身に覚えのある小さな選択が積み重なって、取り返しのつかない場所に着地します。
主人公一家だけが鳥のような記号で描かれるという有名な手法も、単なる作風ではありません。顔が描かれないぶん、読者は自分の顔をそこに置いてしまう。だから終盤の展開は、他人の物語として処理させてもらえないのです。
それでも勧めたい理由|出会えてよかったと思える種類の地獄
この作品を読んだ人のレビューには、共通する言い回しがあります。人には気軽に勧められない、でも出会えてよかった。これ以上ないほど的確な表現だと思います。
RECOMMENDED FOR
- 自意識の描写がえぐい作品を読みたい人
- 長編でじっくり殴られたい人
- 「あの頃の自分」と向き合う覚悟がある人
CONCLUSION
傷の深さで選んでください
3作に共通するのは、読者を痛めつけること自体が目的ではないという点です。どれも「人はなぜ間違えるのか」を、逃げずに最後まで見届けようとしている。だからこそ後味が悪いのに、他人に読ませたくなるのだと思います。
上から順に読むのが安全です。
下から読むと、上に戻ってこられません。
※本記事で紹介した作品には、いじめ・自死・虐待などの描写が含まれます。気分が沈んでいるときの一気読みはおすすめしません。しんどいときは、ひとりで抱え込まず身近な人や相談窓口を頼ってください。